クロムメッキ・装飾用と工業用で使われる硬質クロムメッキとメッキの豆知識

クロムメッキは、生活の一部と言っていいほど、私たちの身の回りのそこかしこに存在しています。水道の蛇口、ゴルフクラブ、車のホイール、チェーン、アクセサリーなど、さまざまな物にクロムメッキが施されています。しかし、クロムメッキには工業用に使われるものと、主に装飾用に使われるものの2種類に分かれます。この2種類のクロムメッキに違いはあるのでしょうか?

クロムメッキについて

メッキ加工

クロムメッキは、見た目が美しく、耐久性にも優れたメッキで、私たちの身の回りには、クロムメッキを施された製品がたくさんあります。たとえば水道の蛇口やゴルフクラブ、アクセサリーなど、挙げればキリがありません。それだけ私たちの生活に浸透しているクロムメッキですが、実は2種類あります。「装飾クロムメッキ」と「工業クロムメッキ」です。

装飾クロムメッキ

装飾クロムメッキは、比較的薄い膜で、主に色合いと硬度を付与することを目的としているメッキの方法で、通常は、下地となるニッケルメッキの上に施します。装飾クロムメッキは通常、分厚くても0.5マイクロメートル程度の厚さしかありません。その性質上、あまり分厚くしてしまうとメッキに割れが生じることがあり、そうなってしまうと耐食性を損なうことになるからです。コストパフォーマンスに優れ、仕上げも美しい装飾クロムメッキですが、毒性の強い六価クロムが使われていることが多く、避ける人もいるため、安全性の高い三価クロムへの移行する動きもあります。水道の蛇口のメッキは、まさにこのクロムメッキです。

・装飾クロムメッキの特徴と用途

装飾クロムメッキは、薄く、硬い被膜なので、傷や摩耗に強いという特徴を持っています。光や熱の反射、塗装のつき具合も良好。そのため、美しさが求められる工業製品のメッキには最適で、インテリア装飾、電化製品、アクセサリーなど、適用範囲が広いことも特徴だと言えるでしょう。単一金属や合金に使用可能です。

工業クロムメッキ

工業クロムメッキには、耐食性や耐傷性、耐摩耗性が求められます。硬度がひじょうに高く、さらに装飾クロムメッキよりも厚みのある施工が可能です。通常、工業クロムメッキは10から200マイクロメートルで施工されます。工業クロムメッキも、装飾クロムメッキ同様、六価クロムから三価クロムへの移行が始まりつつあります。ただし、工業用の分厚いメッキは「研究段階から実用へ」という流れに入ったばかりで、今後の進展が注目されます。

・工業クロムメッキの特徴と用途

工業クロムメッキは「ビッカース硬さ(hv)」で750から1100程度の硬さを持ちます。耐摩耗性がひじょうに高く、摂氏400度程度の高温まで耐える耐熱性も備えています。耐食性については、塩酸などに侵される場合がありますが良好です。低温で加工するため、素材を傷めることもなく定着も良いため、さまざまな金属の表面に加工することができます。

クロムメッキの性質

メッキ加工

クロムメッキには装飾用と工業用の2種類があることをご紹介しましたが、実はどちらも硬質クロムメッキと呼ばれるものです。クロムメッキは美しく、外観の仕上げに欠かせません。クロムメッキは「ビッカース硬さ(hv)」で850以上という硬度を誇ります。しかし、実は耐摩耗性や耐食性という面では劣る部分もあるため、装飾用の場合は、下地にニッケルメッキを施すことにより、その部分をカバーしています。工業用クロムメッキは外観を求めるものではないため、下地にニッケルは使わずにクロムだけを使います。

クロムメッキの代わりになるメッキとは

クロムメッキとひじょうに近い色合いを持つメッキにスズコバルトメッキがあります。スズコバルトメッキは、クロムメッキの代役として使えるのでしょうか?

スズコバルトメッキ

スズコバルトメッキは、スズとコバルトの合金を使用するメッキです。クロムメッキとひじょうに近い色合いを持ち、美しさが求められる製品には、装飾クロムメッキの代替品としても使用されています。スズコバルトメッキは、クロムメッキほど硬くはありませんが、クロムメッキと同程度の耐食性を備えています。しかもクロムメッキよりも電流が偏りなく通るため、対象物に均一に付着します。製品のデザインや用途によっては、クロムメッキよりもスズコバルトメッキの方が向いている場合もあります。スズコバルトメッキは、厚くても0.3マイクロメートル程度でしかつけることができません。そのため、装飾クロムメッキ同様、下地にニッケルメッキを使います。

・特徴と用途

クロムメッキやステンレスに近い外観を持ち、変色せず、優れた耐食性や耐摩耗性も備えているため、装飾品や家庭用品などのメッキに最適です。単一金属から合金まで、さまざまな金属に使用することが可能です。

メッキの豆知識

メッキ加工

ここからは、メッキにまつわるちょっとした知識についてご紹介しましょう。

メッキの厚さの測り方

メッキには、1マイクロメートル以下という極薄のものもあります。このメッキの厚さはどのようにして測るのでしょうか?メッキの厚さは、寸法の精度、耐食性に影響する要素ですので、正確に測る必要があります。

・破壊検査法

破壊検査法は、製品を破壊(切断)してから厚さを計測する方法です。 顕微鏡式断面試験では、製品を破壊した後、研磨やエッチングを施し、電子顕微鏡を使ってメッキ厚を実寸で測定します。顕微鏡式断面試験は、精度の高い計測法ですが、やはり製品を破壊しなければならないという点はデメリットと言えるでしょう。
電解式試験法は、測定機を使って厚さを測る方法です。製品のメッキや素材に適合する専用の電解液を使用して、一定の広さを溶かします。メッキ部分を溶かして素材にたどり着くまでの時間からメッキの厚さを計算します。測定機自体はそれほど高いものではありませんが、やはり製品を破壊しなければならないというデメリットはあります。

・非破壊検査法

非破壊検査法は、測定する製品を破壊しなくてもメッキの厚さを測ることのできる検査法です。
蛍光X線式試験法は、メッキの厚さを測りたい場所にX線を当て、メッキの膜から発生する蛍光X線の量を量ることでメッキの厚さを割り出す試験方法です。「非破壊」なので、製品を壊すことなくメッキの厚さを測れることは大きなメリットですが、装置に入りきらない場合は、残念ながら破壊する必要があります。

鉄はなぜ錆びるのか?

鉄やアルミニウムといった金属は錆びます。錆は空気に含まれている酸素や水と、これらの金属が反応し、表面に変化が起きることなのですが、自然に存在する金属の多くは酸化している、すなわち錆びた状態で存在しているのです。鉄などの金属が錆びるのは、劣化ではなく、より自然で安定した状態に戻ろうとしているのです。もちろん金属の中には、水分や酸素にさらされても安定しているものはあります。その一例となるのが「金」です。

ゴルフクラブのメッキ

ゴルフクラブによく使われるメッキは、「クロムメッキ」や「ニッケルメッキ」です。クロムメッキは光沢感がひじょうに美しく、基本的に錆びることはありません。ニッケルメッキは、クロムメッキよりも変色しやすいのですが、色合いがやさしく、高級感あふれる仕上げにできることが特徴です。ゴルフクラブの中には、あえてメッキをせずに、金属の味わいを活かした製品もありますが、どうしても錆びやすく、メンテナンスにも手間がかかります。